鍼灸大航海時代 第20回 〜日本鍼灸の夜明け〜 伊藤 学

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先日、様々な国々から日本に集まった鍼灸師の先生方と交流する貴重な機会を頂きました。

世界の鍼灸業界においてスタンダードとなっているのは1955年以降に伝統中医学をベースに再構築された現代中医学で、これが英語でTCM(Traditional Chinese Medicine:伝統中医学)と訳されているのでややこしいです。

中国からしてみれば、これも戦略の内なのかもしれません。

世界中、多くの鍼灸の教育機関でTCMをベースにカリキュラムが組まれています。そんな中、日本の鍼灸治療や流派に興味を抱く鍼灸師も少なくはないようです。

日本式の鍼灸をカリキュラムに取り入れている教育機関も一部あるようですし、選択科目や特別授業として取り入れている所も増えてきているようです。

また、海外に支部を持つ日本の流派に所属されている先生方や個人的に勉強されている先生方もいらっしゃいます。こういった先生方や学校の出身者を中心に日本鍼灸の輪が広がりつつあるようです。

しかし、興味を持たれた先生方が日本鍼灸を勉強していくにあたり、まずぶち当たる壁が語学の壁でしょう。

TCMと比較すると日本鍼灸を題材とした文献は翻訳されたものが少なく、また海外でそれを伝えられる先生も少ないため、日本語以外での情報量が圧倒的に不足しています。

そしてもう一つが日本鍼灸の多様性の壁です。これは日本の鍼灸学生も経験することだと思いますが、日本鍼灸と一言で表してもTCMの様に標準化されているわけではないため、流派や個人によって伝える内容がしばしば異なることがあります。

個人的にはこの多様性は日本鍼灸の魅力の一つであると感じています。柔術や古流武術が柔道となり、さらにはオリンピック競技としての“JUDO”となり世界中に広まった裏で失われたものは大きいと思います。

一方で和食とは言い難いものが世界では当たり前のように和食として食されている現状を見ると、多様性は尊重しつつも、ある程度の統一概念は必要なのだと感じます。

今回お会いした先生方の中には日本で鍼灸院を見学したいがどこに行けば良いかわからないという方がいらっしゃいました。このような声は以前からあったようで、葉山在住のドイツ人鍼灸師のトーマス先生は私が鍼灸師になる前から外国人見学者の受け入れ先確保に尽力されていたようです。

トーマス先生の言葉をお借りすると日本の鍼灸界はいまだ「鎖国時代」にあるとのこと。

興味がある方は幾つかのキーワードでインターネット検索して頂ければ容易に見つかると思いますのでご確認下さい。

さて、日本鍼灸の夜明けは近いのでしょうか?

 

伊藤 学(いとう まなぶ)

1977年生まれ。1994年にカナダに渡り、高校・大学を卒業後、2001年に帰国。外資系IT企業を経て、湘南医療福祉専門学校に入学。在学中より川崎中央はりきゅう院にて修行を積む。2010年にSteiner Training Ltd.と契約し客船の鍼師として勤務。7カ月の契約を終え帰国。現在は主にメディカルスパみなとみらい勤務。自身のブログでも海外の鍼灸情報を発信している。

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