鍼灸大航海時代 第19回 〜世界の鍼灸事情: オーストラリア編〜 伊藤 学

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オーストラリアでの鍼灸に関しては2005年に全日本鍼灸学会雑誌に掲載された「オーストラリアの鍼灸事情」*1がありますが、それから10年以上の歳月が経ち、当時の状況とはだいぶ変わってきているようです。

まず資格についてですが、ヴィクトリア州のみであった登録義務が、2012年に国家保健省の管轄となり全国での登録が義務付けられました。

現在のところ、政府管轄で鍼灸資格が管理されているのは中国、日本、韓国、シンガポール、台湾、マレーシア、そしてオーストラリアのみの様です。

2014年で登録者は4,000人を超えていますが、これには医師や理学療法士、カイロプラクターなど他の資格保持者で鍼灸を施す者は含まれていません。

さらに現状、法律で守られているのはあくまで鍼灸師という資格であり、患者が鍼灸を受けていると思わなければ(感じさせなければ)、“鍼灸の様な”施術を行うことができるというグレーな部分がまだまだ存在するようです。

2012年の法改正以来、国内外の同等の資格保持者に国家資格を与えるGrand parentingという猶予期間がありましたが、それも今年の7月に終了したようです。

教育面では、2013年時点で国内には鍼灸資格を取得できる大学が6校有り、大学院課程もあります。

保険については、政府管轄の保険制度であるメディケアでの鍼灸保険適用が開始されましたが、これは現在のところ医師による施術に限定されているようです。また、ほとんどの民間医療保険が鍼灸を適応対象としたコースを用意しています。

2000年以降、鍼灸の研究は盛んに行われるようになり、今後は病院との連携をより深めていく方向になりそうです。

2014年、救急病院における鍼の有効性に関する研究論文*2が発表されましたが、これはオーストラリアの救急病院で200名の救急患者を対象に行われたもので、救急現場における鍼治療は疼痛緩和と悪心に有効であると結論づけられています。

一部の州を除き鍼灸師の需要は供給を上回っているとみられており、登録鍼灸師の半数以上が40代~60代であり30代以下が5%のみであるということから、20年後の鍼灸師不足が危惧されているようです。

しかしながら政府管轄での登録が義務付けられ猶予期間も終了した今、日本の資格をそのまま持って合法的にオーストラリアで鍼灸の仕事をするのは難しいと思われます。

壁は高いですが鍼灸師の活躍の場は十分にあると思いますので、オーストラリアでの活動をお考えの方は、まずはCMBAなどの鍼灸師協会が提供している最新情報を調べることから始めてみてはいかがでしょうか。

*1 https://ssl.jsam.jp/activity/pdf/24austlaria.pdf
*2 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24610638

〈参考資料〉
http://www.imr-journal.com/article/S2213-4220(14)00042-0/pdf

 

伊藤 学(いとう まなぶ)

1977年生まれ。1994年にカナダに渡り、高校・大学を卒業後、2001年に帰国。外資系IT企業を経て、湘南医療福祉専門学校に入学。在学中より川崎中央はりきゅう院にて修行を積む。2010年にSteiner Training Ltd.と契約し客船の鍼師として勤務。7カ月の契約を終え帰国。現在は主にメディカルスパみなとみらい勤務。自身のブログでも海外の鍼灸情報を発信している。

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