鍼灸大航海時代 第18回 〜大学の健康支援制度にみるストレスに対する鍼灸への期待〜 伊藤 学

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前回は企業の福利厚生を通してみる鍼灸に対する評価について書きましたが、今回は学生のストレスケアに励む大学の取り組みを通して鍼灸に対する期待感を分析してみます。

どの年代でも生きていればストレスは付いてまわるものですが、劇的な生活環境の変化を伴う大学進学時や、長かった学生生活が終盤に近づき社会に出ようとする時期などは特にストレスが重くのしかかり、心身ともに不安定になりやすい時期と言えます。

Los Angeles Timesに教育面だけではなく学生の精神面のサポートに力を入れる昨今の大学に関する記事が掲載されていたのでご紹介いたします。

タイトルは“What colleges are doing to address students’ unprecedented levels of stress”:「過去にないレベルのストレスに直面する学生に対する大学の取り組み」*1です。

北米の大学には一般的にStudent Health Serviceというシステムがあり、学生達は健康に関する様々なサポートを受けることができます。

この記事によると、Student Health Serviceへ相談にくる学生の自傷行為や自殺願望が近年増加傾向にあり、3人に1人が真剣に自殺を考えたことがあり、10人に1人は実際に自殺を試みたことがあるというデータがあるそうです。

そして、これまでカウンセリングが主であった精神面でのサポートをより充実させる大学が増えており、Student Health Serviceの一環として鍼灸治療が受けられる大学も増えてきているそうです。

この記事にもカリフォルニア州立大学が鍼灸治療を含んだ新たな施設をオープンするとありますが、“student” “stress” “acupuncture”という3つの単語でインターネット検索するとオレゴン州立大学、ノースカロライナ州立大学、コロンビア大学などで既に鍼灸治療が受けられることが直ぐにわかります。

一方、日本語の「学生」「ストレス」「鍼」で検索すると見つかるのは鍼灸専門学校や鍼灸学生のストレスに関するサイトがほとんどで、一般学生の精神面のサポートに鍼灸を活用するという様なものは中々見つけることができません。

またストレスと鍼に関する研究は盛んに行われており、その有効性を裏付ける論文*2が発表されています。

私の職場でも不安障害や鬱を主訴に来院される外国人の方は少なくありません。

北米ではストレスに対する鍼灸治療は投薬、カウンセリングなどと並び…とまでは言いませんが、ヨガや瞑想などと共に代替医療の代表格としての位置を確立していると感じます。

国の将来を担う学生のサポートに日本で育まれた伝統医学を組み込む意義は大きいと思います。

我々も鍼灸の有効性・安全性を幅広い年代の方にわかりやすく発信していかなければなりませんね。

*1 http://www.latimes.com/local/education/la-me-higher-learning-college-20150930-story.html
*2 Effects of Acupuncture, RU-486 on the Hypothalamic-Pituitary-Adrenal Axis in Chronically Stressed Adult Male Rats

 

伊藤 学(いとう まなぶ)

1977年生まれ。1994年にカナダに渡り、高校・大学を卒業後、2001年に帰国。外資系IT企業を経て、湘南医療福祉専門学校に入学。在学中より川崎中央はりきゅう院にて修行を積む。2010年にSteiner Training Ltd.と契約し客船の鍼師として勤務。7カ月の契約を終え帰国。現在は主にメディカルスパみなとみらい勤務。自身のブログでも海外の鍼灸情報を発信している。

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