鍼灸大航海時代 第16回 〜世界規模で 鍼灸の未来を考えてみる〜 伊藤 学

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2014年の「我が国における鍼灸療法の受療状況に関する調査」が『医道の日本』2015年の8月号に掲載されていました。

これによると鍼灸療法の年間受療率は2005年から減少傾向にあり、2005年の8.1%、2012年の7.3%、2013年の5.6%からさらに下がって2014年には4.9%という結果になったそうです。

さらに厚生労働省によると2012年の就業はり師は10万人を突破しており、2002年と比較して36.4%増、鍼灸単独の施術所は23145ヶ所で2002年と比較して65.2%増で、この数値の推移から需要と供給のミスマッチは明らかであり、日本鍼灸業界が危機的な状況にあることが見てとれます。

そこで、国外にもこのような統計データが存在するのか調べてみたところ、2012年のEvidence-Based Complementary and Alternative Medicineに「Acupuncture Use among American Adults: What Acupuncture Practitioners Can Learn from National Health Interview Survey 2007?」(http://www.hindawi.com/journals/ecam/2012/710750/)という2007年にアメリカで行われた調査を元にした論文が掲載されていましたので、ご紹介します。

これによるとアメリカにおける鍼療法の年間受療率は1990年には0.4%、1998年に1.01%、2002年に1.1%、2007年に1.4%と微量ではありますが上昇傾向にあり、この傾向は論文が発表された2012年にも続く事が予測されています。

そして就業・未就業を問わずアメリカで登録されたはり師の人数は2003年に20750名、2009年には約28000名でこちらも上昇傾向にあります。

受療率が上昇傾向にあるとは言ってもアメリカ鍼灸業界の需要と供給バランスも決して楽観視できるものではないようです。

船上はり師として働いている時に聞いた話ですが、アメリカでは資格取得後の就職先が少なく、開業するものの経営状況が厳しくなり、船で働くことを余儀なくされるという方も少なくないとのことでした。

アメリカで鍼灸の教育機関が最も多いカリフォルニア州に位置するロサンゼルスの街を歩いていると鍼灸院の多さに驚かされますが、日本同様自然淘汰されてしまう院も少なくはないでしょう。

世界中で注目されつつある鍼灸ですが、全世界の鍼灸に携わる人々が協力してこの業界内外を盛り上げていかないといけない状況だと思います。

2016年11月に世界鍼灸学会連合会学術大会(WFAS)が東京・筑波で開催されました。

日本鍼灸を世界へアピールする良い機会になったと思いますが、そういった枠組みにとらわれず、自分に何が出来るのか、何をすべきなのか、私も今一度考えてみることにします。

【参考文献】

『医道の日本』2015年8月号 p209-219 「我が国における鍼灸療法の受療状況に関する調査 年間受療率と受療関連要因(受けてみたいと思う要因)について」矢野忠,安野富美子,坂井友実,鍋田智之

厚生労働省「平成24年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況 3 就業あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師及び施術所」

 

伊藤 学(いとう まなぶ)

1977年生まれ。1994年にカナダに渡り、高校・大学を卒業後、2001年に帰国。外資系IT企業を経て、湘南医療福祉専門学校に入学。在学中より川崎中央はりきゅう院にて修行を積む。2010年にSteiner Training Ltd.と契約し客船の鍼師として勤務。7カ月の契約を終え帰国。現在は主にメディカルスパみなとみらい勤務。自身のブログでも海外の鍼灸情報を発信している。

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