鍼灸大航海時代 第15回 〜内臓にも味覚?〜 伊藤 学

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茹だる様な暑さが続く毎日ですが、この季節のことを東洋医学では陽気が最も盛んな時期と考えます。

そして身体の中で最も陽気の多い臓器が「心」であり、この季節は「心」が最も活発に働く時期でもあります。

この時期には適度に汗をかいて陽気を発散させる事が大事なのですが、これがうまくできないと体内に熱がこもってしまいます。

また汗をかきすぎても「心」に過度な負担がかかりオーバーヒートしてしまいます。

この熱を冷ましてくれるのが「苦味」であり、この季節の養生法としてゴーヤ(苦瓜)、タケノコ、フキ、ゴボウ、魚の内臓、緑茶などの苦味のある食材を積極的に取りましょうという教えが古くから残っています。

これを踏まえた上で今回ご紹介する記事のタイトルを見てみましょう:

「Researchers find bitter taste receptors on human hearts」*。

直訳すると「人の心臓に苦味を感知する受容体を研究者が発見」です。

これは東洋医学とは関係のない研究者によって発見されたようです。

一般の方からすると「ふ~ん」で終わってしまいそうな内容ですが、東洋医学に携わる者にとってみれば非常に興味深い研究なのです。

研究者によると苦味を感知する受容体の半分が心臓にあり、この受容体を苦味成分を使って活性化させると心臓の収縮機能に抑制がかかるとのことです。

これは「心」のオーバーヒートを苦味のある食材を使ってクールダウンさせるという東洋医学に伝わる養生法に当てはめることができそうです。

ただ、口から入れた食材が直接心臓の受容体を活性化させるとは考え難いです。

記事によると、この生理現象はまだ研究段階にあり詳しいメカニズムは解っていないそうです。

また他の研究によると肺にも苦味を感知する受容体があり、気管支を拡張させる作用があることが解っているようです。これも五行の相克関係で説明できるのでしょうか。

なかなか苦しそうですが、古典ができた時代には無かった視点から東洋医学をみるという事は、現代に生きる我々の特権だと思います。

いつもとは少し違う角度から五行について考えてみるのもまた面白いですね。

〈参照〉
*http://medicalxpress.com/news/2015-05-bitter-receptors-human-hearts.html

 

伊藤 学(いとう まなぶ)

1977年生まれ。1994年にカナダに渡り、高校・大学を卒業後、2001年に帰国。外資系IT企業を経て、湘南医療福祉専門学校に入学。在学中より川崎中央はりきゅう院にて修行を積む。2010年にSteiner Training Ltd.と契約し客船の鍼師として勤務。7カ月の契約を終え帰国。現在は主にメディカルスパみなとみらい勤務。自身のブログでも海外の鍼灸情報を発信している。

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