鍼灸大航海時代 第32回 ~スペインの鍼灸事情~ 伊藤 学

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これまでスペインでは鍼灸が医療資格として法制化されていないため、誰でも行える状況にあるとされてきましたが現状はどうなっているのでしょう。スペイン語が読めないため、突っ込んだ情報は得られませんでしたが調査によって得た情報をまとめました。

1926年に制定された法律によると自然療法は資格を持った医師のみが行える行為であるとされています。しかしながら、実際には鍼灸を含んだ自然療法を行う療法士が存在し、多くは医療機関とは別の場所で診療しており、いわゆるグレーゾーンの存在が公にあるようです。このグレーゾーンについて過去に何度か裁判*が行われておりますが、私が調べた限りではいずれも摘発を免れていたようです。

1984年の鍼とリフレクソロジーに対する裁判では高等裁判所は”療法”を行うのに医師免許が必ずしも必要では無いという判決を出しています。しかし、資格を持った医師(医療専門科)のみが診断、検査、適正な”療法”の処方を行う事が出来るとされました。非常にあいまいですが、医師の許可があれば”療法”を実際に行うのは医師でなくても良いととらえる事が出来そうです。
1989年、高等裁判所は鍼灸治療を行った医師資格を持たないとある鍼灸師を無罪としました。判決の根拠は以下の2つとされています。

①この鍼灸師が複数の外国免許を保持しており、ある鍼灸学会のメンバーであったこと。
②当時は鍼灸がスペイン国内の医学教育機関で教えられておらず、また法制化もされていないため、不法な医療行為として扱う事が出来ないという判断。

1993年にも同じ様な理由により、鍼灸師が釈放されています。この様に危うい立場ではあるものの、スペインで活動する療法士達はこれまでこのグレーゾーンを死守してきたようです。
しかし、2012年のCAMbrella report**には2009年に鍼に関する法制化が保健消費者委員会により提案され、2011年に施行される予定であるとあります。この法制化では鍼灸は医師のみが行える行為であるとされています。この法制化が実際に施行されたのか、またそれによって今まで活動していた医師資格を持たない鍼灸師が摘発されたのかという類の情報は見つかりませんでした。いずれにしても日本の資格のみでスペイン開業を目指す事は以前よりも難しくなって来ている事が予想されます。トレーナーとしてスポーツチームや選手に帯同するという形であればまた別の話になるので、コネクションを作れる方には他の抜け道があるかもしれません。

また、スペイン国内でもアンダルシア州とカタルーニャ州は独自の法律を持っているため、国の法制化の影響を受けない可能性があります。そして昨年、スペインは北京自治政府と医療教育分野での協力合意を結んでおり、バルセロナ(カタルーニャ州)にヨーロッパ最大の中医学病院を建設することを発表しました***。カタルーニャ州政府はプレスリリースでカタルーニャをヨーロッパにおける中医学の拠点とすると述べています。これまでヨーロッパにおいてスペインは中医学の普及という観点においてはやや遅れをとっているように見えましたが、今後はカタルーニャ州を中心に加速していくかもしれません。

スペインでの開業を目指している方はこの情報のみで判断せずに是非色々と収集して頂き、よろしければ情報交換していきましょう。

 

*Legal Status of Traditional Medicine and Complementary/Alternative Medicine: A Worldwide Review
http://apps.who.int/medicinedocs/en/d/Jh2943e/7.17.html

**Acupuncture in Spain
http://nafkam-camregulation.uit.no/acupuncture-in-spain/

***Spain to host Europe’s largest TCM hospital
http://m.chinadaily.com.cn/en/2016-02/05/content_23402044.htm

 

伊藤 学(いとう まなぶ)

1977年生まれ。1994年にカナダに渡り、高校・大学を卒業後、2001年に帰国。外資系IT企業を経て、湘南医療福祉専門学校に入学。在学中より川崎中央はりきゅう院にて修行を積む。2010年にSteiner Training Ltd.と契約し客船の鍼師として勤務。7カ月の契約を終え帰国。現在は主にメディカルスパみなとみらい勤務。自身のブログでも海外の鍼灸情報を発信している。

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