第66回 公益社団法人 全日本鍼灸学会学術大会 東京大会 レポート②

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第66回 公益社団法人 全日本鍼灸学会学術大会 東京大会 レポート①

今回も引き続き1日目の模様をお伝えする。

基調講演 「鍼灸治療の生理学的機序、最近の進歩 ー当教室における基礎研究の変遷ー」

演者に久光正氏(昭和大学副学長、(公社)全日本鍼灸学会会長)、司会に後藤修司氏(学校法人後藤学園理事長)により、昭和大学生理学講座生体制御学部門における実験用のラットを使った鍼刺激による行動変化などの研究成果が発表された。


▲(基調講演での久光正氏)

前脳基底部にあるコリン作動性神経は脳の殆どの部分に広がっており、特に大脳皮質や海馬への役割は認知や記憶に関わっている。ニューロンの減少が大きく影響があると考えられており、足三里や合谷を用いた鍼刺激によりアスチルコリンが分泌され、血流を増大させる作用がある。これにより、認知症患者や高齢者における認知機能低下に効果があるといえる。

ストレスに関する研究では、ストレスに対する防御反応に視床下部から分泌される神経ペプチドであるオレキシンの関与が報告されていることもあり、ラット社会的孤立ストレスモデルに円皮鍼を用いた実験データを示し、ストレス行動およびストレスホルモン(コルチコステロン)の抑制や、オレキシン分泌および視床下部のオレキシン神経の活性が抑制されることを述べた。

昭和大学の漢方外来患者の瘀血程度を瘀血スコアによって数値化し、血液流動性と比較したところ、瘀血度の高い患者では血液流動性が低下していることが判明し、瘀血の概念が血液レオロジーという客観的な指標で表現できる可能性について示唆された。

また、乳がんや悪性腫瘍に用いられるパクリタキセル(抗癌剤)による末梢神経障害に対し、鍼刺激を用いたところアロディニアが抑制され、その機序として脊髄における侵害刺激の中枢性感作抑制の可能性を語った。

 

シンポジウム2 「がんと鍼灸ーがん患者に対する鍼灸治療の現状と新たなる展開ー」

シンポジウム2では現在までのがん患者に関する鍼灸治療の現状と総括、今後のはり師、きゅう師の役割について討論された。


▲(右から和辻直氏、金井正博氏、鈴木雅雄氏、小内愛氏、大野智氏、司会の福田文彦氏)

シンポジストによる講演がおこなわれ、まず大野智氏(大阪大学大学院医学系研究科 統合医療学寄附講座)が癌治療に伴う副作用・合併症・後遺症において薬物療法に関連した悩みの割合が顕著に増加していることを述べ、EBMの視点から、癌治療における鍼灸治療の役割について語った。

次に小内愛氏(埼玉医科大学 東洋医学科)は、現在欧米のがん統合医療ガイドラインなどにおいて鍼治療はがん性疼痛、放射線治療に伴う口腔乾燥、抗がん剤や術後の悪心・嘔吐、抗がん剤による神経障害等の症状改善に対しその効果が推奨されていることを述べ、末期がん患者においてもQOL評価が可能なShort-Form Health Survey 8(SF-8)を用い多種多様な愁訴に対しての鍼治療を一定期間行った結果愁訴の改善、QOLの維持・向上が示されたことを提示した。

鈴木雅雄氏(福島県立医科大学 会津医療センター 漢方医学講座)の講演では、がん治療の目的は延命だけでなく患者のQOLを維持・向上することにあり、がん対策推進基本計画の中でも緩和ケアの推進が示されているとし、がん医療の終末期イコール緩和ケアではないと強調された。鍼灸の役割は、質の高いものを出していき今後の新しい緩和ケアを創造することだと語った。

その後、指定発言として、金井正博氏(木更津杏林堂)が開業鍼灸師として何が出来るのか、和辻直氏(明治国際医療大学 はり・きゅう学講座)が在宅訪問鍼灸による担がん患者とその家族への対応をそれぞれ語った。

最後に講演者全員が前に出て、受講者とのディスカッションをおこなった。

司会の福田文彦氏(明治国際医療大学 はり・きゅう学講座)は最後に研究の方法論も合わせた今後の緩和治療創造に対する人材育成やシステムの構築が非常に大事になってくるとしてシンポジウムを終えた。

 

イブニングセミナー 「東洋医学散歩」

株式会社メイプル協賛によるイブニングセミナーでは司会に坂部昌明氏(未来工学研究所)がつき、伊藤和憲氏(明治国際医療大学 はり・きゅう学講座 教授)と中根一氏(経絡治療学会 理事)の両者が演者となって開催された。


▲(右から中根一氏、伊藤和憲氏)

内容的には学会には珍しく経営のお話。

それぞれの置かれた立場から、目的意識の共有やモチベーションの持ち方、また、腰痛や肩こりなど鍼灸が得意とする疾患が他の業種に持って行かれている中、どうしたら治療院の強みを出していけるプロモーションが行えるのかなど、開業して間もない、また開業を考えている治療家にはとても役にたつ講演となった。

治療家としては技術が第一で経営と聞くと引かれる先生も多い中、過剰供給となっているこの業界で経営は今や外せないものとなっている。

今後の学会でもこのような経営を扱った講演が増えていくことを期待する。

学会2日目の模様はまた次回お送りする。

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